アパレルの供給網が食品に劣る上に環境に悪い理由、衣類の廃棄は年間51万トン

アパレルマグ
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こんにちは。

DIAMOND(https://diamond.jp/)より
記事の1部をお届けします。

食品であれば、その商品が遺伝子組み換え食品か、産地国や製造工場がどこにあるのかなど、トレーサビリティーがはっきりしている。しかし、今自分が着ている服がどの国から来た素材で作られたものかはよく分からない。これは、服の生産に関わる工程が複雑怪奇であるからだ。特集『アパレル 知られざる「サステナ淘汰」』(全8回)の#2では、アパレルのサプライチェーンから、なぜサステナビリティの取り組みが進まないのかを解説する。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

アパレルが食品よりはるかに遅れる製造や流通の履歴の把握

「畑から生地作り、最終製品までつながることがビジネスの在り方として一番美しい。われわれはその副産物として、トレーサビリティーが全て取れている」

こう胸を張るのは、オーガニックコットンを専門に取り扱うパノコトレーディングの三保真吾氏だ。取引先のスイスのリーメイは、契約先の綿花の農場の収穫物を5年間にわたって全量買い取るなど、持続可能なオーガニックコットン生産のプロジェクトに取り組み中だ。パノコもそのプロジェクトに参画し、生地や製品を販売している。同社の製品は、農場から生地までの、調達や加工の各工程の履歴を全て追えるようになっている。

食品であれば、素材が収穫された畑の生産者情報などを消費者が把握することができる仕組みは一般的だ。しかし、日本のアパレル業界の場合、このように服の製造や流通の履歴を追えること自体が非常に珍しい。

その理由は、長いサプライチェーンの中で水平分業が行われているからだ。

グッチの親会社の環境負荷が685億円 サプライチェーンを自ら把握して測定・改善

国内の多くのアパレル企業は、販売する服を自ら製造するのではなく、商社などから完成品を仕入れる。OEM(相手先ブランドによる生産)やプライベートブランド(PB)の商品の製造を委託した工場であっても、原料の調達や製糸、染色などの工程は、委託先の工場や商社などが担い、アパレル企業が触れられない状況なのだ。

服の流通過程の“川上”と“川中”の仕事は分断されており、なおかつ川上の中でも分業が行われるという複雑な構造になっている。

「アパレル企業の大半はトレーサビリティーを担保できていない。商社が入るとOEM、ODM(製品のデザインなどから製造まで外部に委託する生産方式)した工場に丸投げする」とアパレルの関係者は口をそろえる。

しかし、服の製造工程の履歴が追えないままでは、サステナブルな経営は不可能だ。服の製造に当たり、CO2排出などの環境汚染がどの程度あったかも分からないのに、最終的な責任を負うのは販売するアパレル企業である。これは非常に大きなリスクだ。

国内アパレル企業が出遅れる一方で、欧米では、製造工程を可視化し、自らの健全性をアピールする動きが加速している。グッチやバレンシアガなどの高級ブランド群を有する仏ケリング・グループは、事業活動による環境負荷を測定・定量化するツール「EP&L(環境損益計算)」を開発。2012年から毎年公表している。

ケリングのEP&Lの報告書では、サプライチェーン全体が地球環境に及ぼす負荷を、金額ベースで公表。その概要が下図で、4次サプライヤーまでの各段階において、大気汚染や温室効果ガス、土地利用、廃棄物、水利用のそれぞれの環境負荷を算出。色付きの円のサイズが環境負荷の大小を示しており、“地球に優しくない”工程が一目瞭然になっている。

ケリング・グループの試算によれば、19年度の環境コストは全体で685億円。15年度の環境コストが全体で1000億円を超えていたことと比較すれば、300億円以上の環境負荷を低減する取り組みをケリングは進めたことになる。

こうした報告と改善の実現には、サプライチェーンの末端である素材製造の現場までさかのぼって調査しなければならない。これには労力やコストがかかるのはもちろんのこと、アパレル企業がサプライチェーンを隅々まで把握することが必須だ。商社に丸投げしていればなおさら難しいだろう。

こうしたサプライチェーンの把握の取り組みは欧米が先行している。これは、すでにファッション関連企業の製造工程上の環境保護や動物愛護のトラブルが頻出していたからだ。

こうしたトラブルで炎上するたびに各地で不買運動が起き、株価にも影響する。コストだけでなく業績に直結したことが、アパレル企業たちを本気にさせたのだ。

遅ればせながら、日本のアパレル企業でも、製造工程の可視化に積極的に乗り出す企業も出始めた。

アダストリアは20年12月、子会社のアドアーリンクを設立し、21年3月には「o0u(オー・ゼロ・ユー)」というブランドを立ち上げた。このブランドは、海外でも使われる環境負荷を可視化する指標「Higg Index」を使い、CO2排出量や水使用量を商品ごとに記載。また、全商品のトレーサビリティーを確保した。

この事業はアダストリア創業者の息子である福田泰生取締役の肝いりで進められた。20年2月ごろ、福田氏から「サステナブル100%でD2C(直接消費者に販売)のビジネスをやりたい。やってもらえないか」と声を掛けられたのが、現アドアーリンク社長の杉田篤氏だった。杉田氏はユニクロやアダストリアで生産幹部を務めた後に新天地に移っていたが、呼び戻された格好だ。

ただ、環境に配慮した取り組みも、現時点では子会社にとどまっており、アダストリア本体では進んでいないのが実情だ。

「アダストリア本体で(トレーサビリティーの担保などを)やることは可能だが、既存の仕組みやインフラがあり、動きが遅くなってしまう。われわれの前衛的な活動を“仕組み化”できれば、本社のブランドにも生かすことができる」と杉田氏は説明した上でこう強調する。

「コロナ禍でアパレルは“不要不急”なものになった。この服を着たらサステナブルに貢献できているんだなと思ってもらえる商品を作りたい」

「サステナ」を作りすぎの“免罪符”に 地球に優しくないアパレルの見抜き方

今のアパレル企業は猫もしゃくしも「サステナビリティ」をうたう様相だ。しかし、内実を見ていくと、美辞麗句と実際の取り組みが懸け離れていることも少なくない。

#3『アパレル界で「バッタ屋2.0」大暴れ!月100万着の服を買い漁る猛者が生まれた理由』(5月5日〈水〉配信予定)で詳説するが、例えば衣類のごみの状況からもそれが言える。

日本総合研究所の調査によると、20年に国内で廃棄された衣類の量は年51.2万トンに達している。だが、そのうちアパレルや小売りなど事業所からの廃棄は1.4万トンにすぎない。一方、家庭からごみとして出されて捨てられた衣類は49.6万トンで、廃棄される服の大半は一度購入されたものだということになる。家庭から出る衣服のごみを減らさなければ、そもそも廃棄は減らない。

ファッションビジネス・コンサルタントの小島健輔氏は「建前と実態に乖離がある。実態は地球環境に優しくないことをガンガンやっていて、それをカムフラージュするために免罪符としてキャンペーン的に“サステナブル”をうたうケースが多い」と喝破する。

では何が評価すべきサステナブルな行動なのか。小島氏によると、三つのポイントがあるという。

まずは、とにかく「捨てない」ことだ。

売れ残った服を焼却処分するのではなく、リメークして翌シーズンに販売するなどの企業努力をしているかどうかが重要だ。売れ残りを減らすための、流通管理の質の高さも問われてくる。また、購入者が長く着ることのできる、耐久性の高い服を作ることも重要なポイントになる。

ワンシーズンしか着られない服を作りながら、「サステナブルな服も作っている」と宣伝したり、再生素材や生分解性素材を使っていると生産段階を宣伝していたりしたら要注意だ。それらは「ごみを量産している企業の免罪符」(小島氏)である。

二つ目が、「サプライチェーンがサステナブル」であるかどうかだ。サプライチェーンと、長い期間をかけて信頼性を築き上げているかが問われる。商品の“賞味期限”が長く、また販売面でも翌年以降も売れるようなMD(商品企画)になっているかは押さえておくべきポイントだ。

そして三つ目が、「本業のアンチ・サステナブルな部分をサステナブルに変えている」かどうかだ。

「極論すれば、H&Mが『ファストファッションはやめました、来年も着られる服しか作りません』と宣言するようなこと」と小島氏が言うように、自社のビジネスモデルが抱える課題を解決していなければ、ただの“キャンペーン”と捉えて差し支えないだろう。

消費者側も、アパレル企業の宣伝文句にだまされないリテラシーを身に付けておいた方がいい。

「オーガニックコットンは肌に優しい」という宣伝文句を見掛けたことのある人は多いだろう。しかし、オーガニックコットンはあくまでも生産過程がオーガニックであるだけで、最終商品ではオーガニックであろうがなかろうが肌触りなどに差は出ない。オーガニックコットンが優れているのは、綿花に農薬や遺伝子組み換えの種を使わないといった意味での持続可能性という点である。

オーガニックコットンを使用した製品をサステナビリティと無関係に「売らんかな」の精神で販売しているからこそ、「肌に優しい」といったいい加減な内容の宣伝までしてしまう。消費者がこうした売り文句につられないこともまた、企業を変える大きな力になるだろう。

今起きているサステナブルの動きは、ただのブームではない。ビジネスのルールそのものが変わり始めていると認識して取り組まなければ、淘汰の波にのみ込まれることだろう。

 

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