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アパレル業界に「死亡宣告」をつきつけた「環境省レポート」の衝撃的中身

アパレルマグ
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こんにちは。

マネー現代(https://gendai.ismedia.jp/money)より
記事の1部をお届けします。

慢性的な過剰供給にコロナ禍が加わって2020年のアパレル消費は2割も減少したが、このほど環境省が公表した『SUSTAINABLE FASHION』レポートがアパレル業界に衝撃を与えている。というのも、慎重に購入して長く使い、リユースやリサイクルして生産も消費も廃棄も圧縮することが環境負荷を軽減すると大々的に提じているのだから、「使い捨て」と「買い替え」で成り立って来たファッション業界にとっては「死亡宣告」にも等しい。

コロナ禍に新疆綿問題も加わって先行きが見通せなくなったファッション業界に、またもや難問を問いかける環境省のレポートは、「サステナブルファッション」で活路を切り開きたい業界に冷水を浴びせることになるのだろうか――。そう問いかけるのは『アパレルの終焉と再生』の著者でアパレル流通ストラテジストの小島健輔氏だ。

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「より安く より多くって、いいこと?」と

環境省『SUSTAINABLE FASHION』レポートは「これからのファッションを持続可能に」をテーマに、『ファッションと環境の現状』『サステナブルファッションへの関心』『ファッションと環境へのアクション』と三段階で構成し、衣服の生産から着用、廃棄に至るまで環境負荷を軽減するには何をすべきか、消費者とファッション業界の両方に平易な言葉で問いかけている。

『ファッションと環境の現状』では、商品企画段階、原材料調達・紡績・染色・裁断・縫製の生産段階、輸送・物流段階、販売・利用・排出段階、回収・リペア・リユース・リサイクル段階とわかりやすく図示して、如何に環境負荷が大きいかデータを揃えて論証し、「より安く より多くって、いいこと?」と問いかけている。

『サステナブルファッションへの関心』では、消費者の関心が高まっていること、私たちが求められていることをアンケート結果で裏付け、『ファッションと環境へのアクション』では、消費者として取り組めること、ファッション企業として取り組めること、を左右に対比して具体的なアクションを提議している。

「長く大切に」「リユースを楽しむ」「先を考える」

『ファッションと環境へのアクション』では、大きくいくつかのアクションを提案している。具体的には

(1)『今持っている服を長く大切に着よう』では「一着との長いお付き合いVS.長く来られる丁寧な服作り」「手を加えて愛着倍増へVS.リペアで新たな価値作り」

(2)『リユース(再利用)でファッションを楽しもう』では「服をシェアして楽しもうVS.新たな服と出会える選択肢の拡大」「セカンドハンド(古着)で何度も楽しもうVS.リユース市場の活性化」

(3)『先のことを考えて買おう』では「本当に必要か見極めようVS.適正な数量と在庫管理」「長く着られる品質を選ぼうVS.短サイクル化の見直し」と、安易な「衝動買い」や「使い捨て」を戒め、「長く着られる服」を慎重に選んで購入し、シェアやリペア、リユースで一着を長く楽しむ、といったことを具体的な行動として推奨している。

なるほどと納得させられる理想的な提言だが、これでは「新品」の購入が抑制され、シェアやリペアで多くの人が一着を長く着ればさらに「新品」の購入が減り、安価なリユース(古着)に圧迫されて「新品」の市場が縮んでしまうと危惧される。

実際、アジアやアフリカの後進国では先進国から流入する魅力的で安価な「古着」が地場のアパレル産業を壊滅させてしまうことがあり、今日では多くの後進国が「古着」の輸入を禁止したり制限している。顧客の排出した「古着」を引き取って途上国に無償援助するというチャリティは現地の実態を見ない先進国の驕りであり、善意が貧困を輸出することになりかねない。

「新品」市場は崩壊する…のか?

国内市場でも、過剰供給の果てのシェアやリペア・リユースへの転換は「新品」市場の劇的縮小を招くリスクが危ぶまれる。

80年代初期のピークには2兆円近い規模があった着物市場が急速な需要の縮小に供給の圧縮が追いつかず「流通在庫十年分、タンス在庫百年分」という惨状に陥り、リペア・リユースとリサイクルが主流となって「新品」市場規模が8分の一に激減した悲劇が他人事とは思えなくなる。

「衝動買い」と「使い捨て」を否定すればファストファッションなどマーケットがなくなってしまうし、「長く着られる服」であるためには物理的な耐久性だけでなくトレンド変化に振り回されない価値の耐久性も求められるが、衣料品でそんな「耐久消費財」が成り立つのだろうか

アパレル商品にはもとより「ファスト商品(消費財)」、「ランニング商品(多年性消費財)」、「インベスティメント商品(耐久消費財)」の三種がある。

低価格化が進んで賞味期間も耐久期間も短いワンシーズン使い捨ての「ファスト商品」が広がるとともに、賞味性でも耐久性でも3〜4シーズンは使える「ランニング商品」は割高なNB(ナショナルブランド)が「ユニクロ」など手頃なSPA商品に代替され、トレンド変化が速くなる中、値は張るが10年は着れてユーズドでも値段が通るブランドものの「インベスティメント商品」の価値は見失われていった。

高級ブランドの「価値」が上がる

「インベスティメント商品」とはトレンドに流されない「永遠の定番」的な高品質ベーシック商品であり、「アイテムに特化して自社工場または準じる直轄工場で厳密に品質管理されて生産される耐久消費財」と定義したい。

欧州ブランドが自社工場で生産するコートやジャケット、米国ブランドが自国の工場で生産するジーンズやワークシャツ、ハワイブランドが現地の工場で生産するアロハシャツなど、発祥国のものづくり文化とブランド、アイテムと生産工場が一連に特定されるもので、同じブランドの同じアイテムでも海外工場への委託生産品やライセンス生産品は『逸品価値がない』とされる場合が多い。

我が国でも自社工場で生産される「サンヨーコート」は典型的な「インベスティメント商品」であり、同じ自社工場で生産されていた「バーバリー」はライセンス品でも英国生産のオリジナルと対等の「逸品価値」があった。中国生産された「バーバリーロンドン」より格段に高品質、と「サンヨーバーバリー」を惜しむフアンも少なくなかったのではないか。

欧州の高級ブランドでもアパレルは外部工場への委託生産が大半で「インベスティメント商品」とは言えないものも多いが、シャネルやディオールなどスーパーブランドは自社工場(アトリエ)生産にこだわって品質と味わいを堅持している。

バッグや時計もブランドによっては外注工場製、ひどいのはライセンス生産品もあるが、一流ブランドは部材・部品から製品まで、すべて自社工場生産を貫徹するのが「お約束」で、ルイ・ヴィトンやブルガリは徹底している。

アパレル業界はこう変わる

高額でも品質を徹底した「インベスティメント商品」は賞味期間も耐久期間も永く、ユーズドの再販価値も高いから、愛用期間や着用回数で割れば『投資に見合う』お買い得品という評価もできよう。

「サステナブルファッション」が問われるなら、消費者もファッション業界も「ファスト商品」より「ランニング商品」や「インベスティメント商品」にシフトすれば良い。

「新品」の販売数量は激減するだろうが単価は上昇し、シェアやリユース、リペアやリサイクルで新たなマーケットやビジネスも広がるから、業界の壊滅は避けられるのではないか。

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