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孫正義の師が教える!「今日を懸命に生きるコツ」

CAREER&SKIL(キャリア・スキル)
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仕事でもプライベートでも、何か行動を起こすには、背中を押してくれる言葉の力が必要です。3000人以上の一流のプロフェッショナルを取材してきた上阪徹氏が、最高の言葉を選りすぐって1冊にまとめた『1分で心が震えるプロの言葉100』の中から、さらに厳選したプロの言葉を紹介します。今回は、ちょっと哲学的ですが、「何のために働くのか」を考えるヒントになる言葉。昨日の自分よりも成長するために、毎日を充実させるために大切な一生ものの言葉です。

より

ファーストクラスの接客で知った本物の人

「タクシーの運転手さんに偉そうな口をきく人間にはかなり怒ります」
──御立尚資(元ボストン コンサルティング グループ日本代表)

御立尚資さんは、ボストンコンサルティンググループ(BCG)で、日本代表のみならず、グローバル全体の経営判断を行う経営会議メンバーに日本人として初めて選任された。

BCGに移る前の前職は、日本航空。仕事は現場から始まった。空港カウンター、さらにはアシスタントパーサーとして機内サービスにも従事した。

「現場をやらせてもらったのは、ものすごく大きな意味がありました。もともとサラリーマンには向いていないと自分で思っているような新入社員だったわけです。現場から始まったから、素直に会社にいられたと思うんです」

キャビンアテンダントの世界は華やかに見えるが、実は時差もあって厳しい。サービス自体も勉強になったが、乗客から学べることも多かった。例えば、ファーストクラスでサービスをすると、本物感のある人がわかった。

「自分のタイトルが自分の存在証明になっていて、サービスをする人間に対してひどい態度を取る人がいる。その一方で、社会的に高い地位にあるのに、われわれのような人間にも、ものすごくちゃんと接してくださる方もいる。若いコンサルタントとタクシーに乗ったとき運転手さんに偉そうな口をきく人間には怒ります。普段は声を荒らげるようなことはないんですが、そういうときは真剣に怒るんです。こんなことをしていたら、どこまで行っても半人前にしかなれないぞ、と」

後に本社の経営企画に移るが、現場経験があったからこそ、やるべきことがわかった。

うまくいったときにこそ、人は試される

私自身、学生時代、飲食店でアルバイトをしていたので同じことを当時から感じていたが、この言葉がスーパーエリートのコンサルティング会社トップの口から出てきたことに大きな衝撃を受けた。しかも、声を荒らげて怒る、と。やはり、そうだったのか、と感じた。

権力を手に入れたり、地位を与えられると、とたんに勘違いしてしまう人が出てくる。そんな人が、成功できるはずがない。人はつねに試されるのである。とりわけ、うまくいったときにこそ、試される。タクシーしかり、飲食店しかり、サービス業の人たちへの対応は、人間性を試すうえでの、わかりやすいリトマス試験紙である。

こんなことを語っていた人もいる。

「むしろ、厳しい環境に身を置いたほうがいい」
──糸井重里(ほぼ日社長)

糸井重里さんは1980年代以降、コピーライターとして数々の名作を残し、日本のトップクリエイターとして時代を牽引してきた。1998年には、ウェブサイト「ほぼ日」を開設。2017年に株式上場を果たした。

幾度も取材しているが、強く印象に残っているのが成長をテーマにした話。成長を加速させるのは、理不尽さに直面することだというのだ。

「簡単には受け入れられないことや認められないことにぶつかる。思ってもみないところで足元をすくわれたり。ひどい上司を持つということもそう。大きな無力感に襲われたり」

糸井さんはこんな例え話をしていた。岩場や砂地のような環境の厳しい場所では、植物は必死になって根を伸ばす。細かな根っこが綿のように生えてきたりする。ところが、環境のいい森の中にいたりすると、浅くて太い根だけになって、風が吹いたらバタっと倒れてしまったりする。

「むしろ厳しい環境に身を置いたほうがいい。たくさんトライできて、失敗できるところにあえて行く。その勇気が違いを生むと思いますね」

必要なのは、機会なのだ。たくさんの機会が得られたら、やはり成長できる。

「あとは本気になることです。そういう人は毎日、努力している。筋肉がつかないよ、と文句言っている人は、だいたい毎日やってない。5分だけでいいのに。でも、難しいですよね、5分。この5分を作れるかどうかが、本気度だと思うんです」

人と同じことをして、人と違う結果が出るはずがない。結果には、必ず原因があるのだ。

新聞を社会欄から読む理由

ビジネスパーソンとして最も危ないことは何か、という質問に「成長できない環境に身を置いてしまうこと」と答えた人がいた。実は「ラクでおいしい」仕事や環境は、長期的に見れば極めて危険である。それは、成長できないことと、ほぼ同義だから。

では、なぜ成長しなければいけないのかというと、成長しないと立場を失いかねないから、というだけではない。成長することによって、より大きく世の中の役に立つことができるからである。成長しようとして、一生懸命に生きることになるからである。それは、毎日の充実につながる。

最後に、この人の言葉を紹介しておきたい。唯一、本の中で出典のない言葉。食事の席で、聞いた言葉である。

「明日は誰にも保証されていない」
──野田一夫(経営学者)

野田一夫さんは、今や日本を代表する企業となったソフトバンク創業者の孫正義さんが、師と仰ぐ人物。創業まもない頃、孫さんやパソナの創業者・南部靖之さんなどをサポートしていたのが、当時ニュービジネス協議会の理事長を務めていた野田一夫さんだった。

東大卒業後にスター教授となり、日本にピーター・ドラッカーを紹介。立教大学教授時代には観光学部を創り、多摩大学、宮城大学の初代学長を務めた。私は何度もインタビューする機会を得たが、忘れられない言葉をもらったのは、一緒に食事をしたときだった。

野田さんは私に新聞を読んでいるか、と尋ねた。読んでいると答えると、どこから読むか、と問われた。1面からだと答えると、僕は違う、と言われた。社会欄から読むのだ、と。

「どこどこの街で事故が起きて誰々が亡くなった。そんな小さなベタ記事があるだろう。そこから読むんだ。それには理由がある。いつなんどき、自分の名前がここに出ることになるのか、わからないということを思い出すために、だ」

ハッとさせられた。たしかに、そうなのである。そこに自分の名前が、また家族や友人、知人の名前が、出ないとはいえないのだ。

「人は当たり前のように明日のことを考える。でも、明日は誰にも保証されていない。もしかすると明日はないかもしれないと気づければ、今日を懸命に生きるようになる。そのことを改めて自分に思い知らせるために、社会欄から読むんだ。上阪くん、君は今日を懸命に生きたか!」

衝撃だった。大事なのは今、この瞬間なのだ。今をこそ、大事にしないといけないのだ。

まとめ

いったい自分は何のために生まれたのか。何のために生きているのか。こうした哲学的な思考をする機会が、日本人には極めて少ない。青臭い議論もあまり好まれない。だが、「何のために生きているのか」を認識できず、「ただ生きるために生きている」のだとすれば、そこに充実感など、あるはずがない。

たくさんの人へのインタビューを通じて、私の関心は単に社会的、経済的に成功することではなく、生きていくうえでの本質的な価値に向かっていった。生きるとは何か、幸せとは何か。プロフェッショナルと呼ばれる人たちの言葉には、そのヒントが散りばめられている。

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