定期購読者様限定ページはこちら

東大合格者の遠回りのようで効率的「理科学習法」

CAREER&SKIL(キャリア・スキル)
スポンサーリンク

東京大学に合格するためにはどのような勉強をすべきなのか。東大受験指導専門塾「鉄緑会」が手掛ける年度版問題集シリーズの『2022年度用 鉄緑会東大物理問題集 資料・問題篇/解答篇 2012-2021』『2022年度用 鉄緑会東大化学問題集 資料・問題篇/解答篇 2012-2021』を担当し、長年東大物理・化学入試を分析してきた鉄緑会の守川春雲、寺田侑祐の両氏が、「物理」と「化学」の勉強法について解説する。

東大理系の場合、高校理科4科目(物理・化学・生物・地学)の中から2科目を選択して受験することになります。その中で選択者が最も多い組み合わせは「物理・化学」選択となります。今回は、東大受験を見据えた物理や化学のあるべき学習法について、鉄緑会での指導経験をふまえて考察してみましょう。

物理の誤った学習法①:ひたすら問題演習

まずは物理の学習について、どのような学習スタイルが正しいのか、2つの極端な例を挙げて考えてみましょう。

①基礎はほどほどにしてとにかくたくさん問題を解く

②理屈さえわかっていれば問題は解けるはずなので、問題演習は二の次にして参考書で理論の習得を目指す

結論から申し上げますと、どちらも正しい学習方法とは言えません。

「なぜその法則を使うのか」を意識して解く

まず1つ目の学習方法についてです。大学入試では問題を解けないといけない訳ですから、問題演習は確かに大切です。ただ、問題演習というのは、正しい理論を身につけ、それを応用するために行うべきものです。そのため、根底にある理論があいまいなまま問題演習のみを積んでも、正しいレシピを知らないで闇雲に料理を作るのと同じことになります。

このような学習方法に陥った場合、問題によって正解することはあっても、それは「たまたま」であり、そこから得られるものはその場限りの成功体験以外にはないでしょう。

とくに初習の段階では、多少時間がかかっても「なぜその法則を使うのか」を意識しながら問題を解くとよいでしょう。これを積み重ねると、正しい物理的感覚が養われ、問題を解くスピードも上がってきます。

また、理解できない事柄に直面したときに、「なぜそれを理解できないのか」をきちんと分析することも大切です。物理は論理の学問であるため、理解できないことがあるときに、それ以前の学習事項の理解があいまいであることがしばしばあります。

例えば、「円運動」の理解があいまいなまま「単振動」を理解することは不可能です。そのため、わからないことの原因をトコトンまで突き詰めることが大切です。

物理の誤った学習法②:理論偏重

次に2つ目の学習方法についてふれます。実は、私(守川)が高校2年生で初めて物理を学習したときに陥ったのもこの学習方法でした。物理は数少ない法則から成り立つのだから、その法則をしっかりと理解していればどんな問題でも解けるという理屈です。

残念ながらこれも正しい学習方法ではありません。教科書を完璧に理解しているからといって問題を解けるほど大学入試は甘くはないのです。上の料理の例えでいうと、未経験者が本を読んでレシピを覚えてもうまく料理できないのと同じです。

実際、研究機関である大学が入学後の学生に求めているのは、教科書に書かれているようなすでに確立された理論を理解する能力はもちろんのこととして、未知の現象を目にしたときに、既存の知識を応用してその現象を正しく分析する能力です。

このような能力は持って生まれたものではなく、研究室に配属され、先輩や教員からやり方を教わったうえで、自分で試行錯誤を重ねて習得するものです。入試問題を解くという作業は未知の現象を分析することに相当します。典型問題の解き方を教わったうえで新規問題を自力で解くという作業は、大学入学後に求められる能力の訓練とも言えるでしょう。

「理解」の5つの段階

鉄緑会の授業は、高3の9月までは講義中心、そして10月から12月は演習中心になります。ただ、講義中心、演習中心といっても、それぞれ講義のみ、演習のみをするわけではなく、講義中心の回であっても学習したことを理解しているかを試すテストは毎回行いますし、逆に演習中心の回であっても生徒が忘れやすそうな基本事項は必ず復習するようにしています。

高3の4月の段階では入試レベルにはほど遠い生徒たちも、12月までの9カ月間で

1 法則を理解する段階
2 例題を通じて法則の使い方を知る段階
3 新しい問題に対して法則を自分で使ってみる段階

と段階を踏んで成長していきます。前述の2つの学習方法は、それぞれ1・2なしに3に進むことと、1・2のみに固執することに相当します。前段階なしに次の段階に進むことが不可能なのは言うまでもありせん。この3段階を順調に進めれば、一般の大学入試であれば問題なく突破できるでしょう。

ただ、中にはさらに上の段階まで進む生徒もいます。それは、

4 解けた問題のさまざまな別解を検討する
5 解けた問題の条件設定を変えて解いてみる

という段階です。つまり、単に問題を解けただけでは満足しない意欲的な生徒です。この段階まで進めれば、最難関である東大理Ⅲであっても余裕を持って突破できるようになります。

高校化学は大きく理論化学・無機化学・有機化学という3分野に分かれています。そのうち、理論化学は物理と同様、自然現象を司る法則を学び、化学反応による変化を定量的に取り扱おうという分野です。

一方、無機化学・有機化学は、無機物および有機物の性質や製法を学ぶ知識中心の分野となります。ただし、知識の羅列を学ぶというよりも、理論化学で学んだ種々の法則性をもとに個々の性質の理解を深める分野という側面が強くあります。東大入試においては、無機・有機化学の問題の中で理論化学に基づく考察や計算が要求されることが多々あります。

このように多彩な側面を持つ化学という科目の特徴を踏まえ、大学入試化学を突破するためにはどのような点に気をつけて学習に取り組むべきかを考えていきましょう。

面倒がらずに最後まで手計算する

化学学習法①:基本となる知識事項・法則

ABCといったアルファベットを覚えないと英語学習を始められないのと同様に、化学においても、例えば元素記号といった根幹をなす知識は覚えなければ始まりません。

また、はじめに学ぶ理論化学分野では、まずは幾多の自然現象の中から先人たちが見いだしてきた原理や法則を学習します。それらの主張を理解し、具体的な状況下においてそれらの法則を活用することで、体に染みこませる訓練を積みましょう。

化学学習法②:計算

とくに理論化学分野では、小数点を含む3桁以上の数値同士の掛け算・割り算など、煩雑な計算が多々登場します。現在、日本の多くの大学入試では、試験での電卓使用は認められていませんので、これらの計算をすべて手計算で遂行する必要があります。

その際、日ごろから「計算が面倒なので立式だけ済ませてそこまで正しければよしとする」という癖が付いてしまうと、試験の現場で答えの数値を正しく合わせることができません。

計算力涵養のためにも、日ごろから面倒がらずに計算を最後まで手計算で実行して、「答えの数値まで合わせなければ正解とは言えない」という自分に厳しい姿勢で臨むようにしましょう。

化学学習法③:オーダー感覚

化学の計算問題を解く際には、あくまで「扱っている対象は実在する物質である」という意識を忘れないようにしましょう。

そして、「おおむねどの程度の値になりそうか/なるべきか」という感覚(オーダー感覚)をつねに持ち、自らの計算結果をそれと照合して「自然現象として妥当であるか否か」をチェックする習慣を付けましょう。

例えば、金属の比重を求める計算問題であれば、答えはどの程度の値になるべきでしょうか。水の比重が1です。リチウムのように極めて軽い金属の場合、比重が水より小さく0.5程度になることもあります。逆に金や白金は極めて重い金属で、比重が20前後となります。

よって、金属の比重はおおむねこの範囲に収まるべきであり、そのオーダー感覚があれば、自分の算出した金属の比重が50000などという値になってしまった場合、どこかで計算ミスをしたことに自ら気づけるはずなのです。

逆に、自らの算出した値の明らかな異常さに気づけないというのでは、自然現象を扱ううえで不健全な状態と言えるでしょう。

純粋に覚えなければならない量を半分以下にできる

化学学習法④:理解しながら習得する

高校化学の3大分野のうち、無機化学・有機化学分野は、種々の化合物の性質や製法を学んでゆく分野であり、一般に暗記分野と言われています。

世間ではこれらを「反応式などをひたすら暗記してゆく無味乾燥な暗記分野」とする誤解がはびこっています。

確かに教わる知識の絶対数は多いのですが、それらの事項のうち多くの部分が、理論化学で学んだ原理に基づいて考えることで、その必然性が納得できるようになっているのです。

種々の反応式を学ぶ際には、毎回「この反応はどう考えれば自然な反応と理解できるか」という視点を持ち、知識を「理解しながら習得する」ように努めましょう。

そのような理解をすることで、純粋に覚えなければならない事柄の量は、世間一般で思われている量と比べて半分以下に減らすことができるはずです。

例えば、無機化学においては、各反応における加熱の必要性の有無というのが重要な学習事項となります。それを1つ1つ暗記しているとらちが明きません。各反応の推進原理を理解していれば、加熱の必要性の有無は「いちいち覚えなくても意味を考えればわかること」となります。

反応式の字面を暗記するのではなく、その推進原理までさかのぼって理解することは、遠回りのように見えて実は最も効率的なのです。

 

コメント