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“誰一人取り残さない”ファッションブランドの実現 人権重視、残布梱包、生産ロスなき服をめざして

アパレルマグ
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こんにちは。

FNNプライムオンライン(https://www.fnn.jp)より
記事の1部をお届けします。

誰一人取り残さない持続可能な社会を目指す。SDGsの思想はアパレル業界にも広がっている。オール・インクルーシブファッションの実現を目指す起業家の取り組みを取材した。

社名の由来は「やばいじゃん、それ!」

「会社を立ち上げたのは去年の9月15日、世界民主化運動の日です」

こう答えるのはSOLIT(そりっと)株式会社の代表取締役田中美咲さんだ。

SOLITはできる限り多様な人が楽しめ、地球環境を配慮したファッションブランドの実現を目指している。社名SOLITの由来は「やばいじゃん、それ!」というスラングだそうだ。

IT企業の出身で防災関連のNPO「防災ガール」を運営してきた田中さんが、この事業を始めたきっかけは何だったのか?

「車いすユーザーでもある大学院の同級生が『普段着ることが大変で、パーカーやセーターのような上から被る服ばかりになってしまう』と言っていて、服は世の中にたくさんあって捨てられる服もあるほどなのに彼にとって選択できる・選択したくなる服が少ないことに違和感を覚えました」(田中さん)

インクルーシブデザインの手法を取り入れる

さらに田中さん自身にもそうした経験があった。

「私も小さい頃からバスケやチアリーディングをやってきて、太ももが太くなる運動スタイルだったので、服が自分の体型にフィットした経験がほとんど無いんです。彼の話を聞きながら、自分も服に関して悲しい思いをずっとしてきたことに気がついて。服は自己表現の手段にもなるし、元気になったりワクワクしたりとそこにはパワーがあるはずで、解決策があればハッピーになる人がいると思い、誰もが好きなファッションを楽しめる社会にチャレンジしようと思いました」

身体に障がいがあったり、体型が特徴的であったりすると、さらに自分にフィットする服を探すのが難しくなる。

そこでSOLITでは服の部位ごとにかたちやサイズ、仕様を選択でき、1600通り以上の組み合わせから自身の好みと身体に合わせて服をカスタマイズすることを可能にした。こうしたサービスや商品は、企画段階から当事者を巻き込む「インクルーシブデザイン」の手法を用いて開発された。

「フィットする服を探すのが難しい」

車いすダンサーのかんばらけんたさんも、企画段階から開発に携わった一人だ。かんばらさんといえば、2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックの閉会式でアクロバティックなダンスを披露し世界を驚かせたことが記憶に新しい。いまかんばらさんは大手コンピューター会社でシステムエンジニアとして働いている。

「田中さんから『ファッション関連のサービスを立ち上げる』とSNSで声をかけていただいて。僕は様々な障がい系のファッションに関わらせてもらっているので、こういう事例もありますよとかアドバイスや意見を伝えました」

SOLITは店舗が無くネットで注文を受ける受注生産となっている。5月のEC サイトの公式オープンを前に先月東京都内と熊本で試着会を実施し、かんばらさんも服を試着した。

「僕は何店舗も歩いて服を選びますが、選択肢が少ないのは確かですね。体に変型があるので、フィットする服を探すのが難しくて、試着しても不安なまま買うことがあります。でもSOLITはいつも服を買うときよりも安心感がありますね。シャツはストレッチ素材になっていて動きやすいし、車いすだとシャツの袖がすぐ汚れるんですけど、腕が細いものを選べたりするのでとても助かります」

SOLITが考える5つの責任とは

インクルーシブともう一つSOLITが目指すのはサステナビリティだ。

田中さんは「SOLITには“5つの責任”がある」という。

1:不必要なものを生み出さない
2:商品寿命を長くする
3:リサイクル
4:人権を守る
5:既存のルールを捉え直す

「SOLITは障がいのある方向けのファッションブランドではなくて、障がいのある方もそうでない方も、そして人間だけでなく動植物や地球環境へも配慮されたオール・インクルーシブなファッションでありたいと思っています。まず“不必要なものを生み出さない”ために、商品の下げ札や値札をなくし、受注生産をすることで生産ロスを生みません。既存のアパレルブランドにおける大量生産・大量消費モデルだと、現在は一度も袖を通されることなく捨てられる服があるんです」

またSOLITでは商品に耐久性のある素材を使って“商品寿命を長く”したり、配送の梱包にビニールやプラスチックを使わず、工場で廃棄される残布を活用して“リサイクル”している。さらに発注する工場は労働賃金など“人権”が守られていると確認できる、顔のわかるところに限定している。

そして5番目の責任は“既存のルールを捉え直す”だ。

「いま作っている服はセクシュアリティ、障がいの有無もできる限り関係の無いデザインにしています。ボタンや縫い目がこうあるべきといった既存のルールを超えて、多様な人々のニーズに応えた製作を行っています」

筆者もいくつか服をみたが、ボタンが磁石になっていて手に障がいのある人でも簡単に着衣出来るようになっているなどこれまでにない発想でつくられていた。

「こうした取り組みが未来のために必要だ」

SOLITには既存のファッション業界に従事しながらも、ファッションにおける大量販売・大量消費・大量廃棄モデルに違和感のある人たちや、医療・福祉従事者の中でも衣服による患者のQOL向上や課題解決を信じる仲間が集まっている。

田中さんは「皆でこうした取り組みがこれからの未来のためには必要だと話しています」という。

「このビジネスモデルでは赤字にはならないけどマネタイズはなかなか難しいです。しかしここから得た知見やデータを使えば、他のファッションブランドにオール・インクルーシブラインを入れてもらったり、建造物やまちづくりのインクルーシブデザインに活用できると思っています」

セクシュアリティや信仰、障がいの有無を超えて、すべてを包み込むインクルーシブデザインの考え方は、今後益々ビジネスに広がっていくだろう。

 

 

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