Snow Peak(スノーピーク)式 好きな事だけを仕事にする極意

COLUMN(コラム)
画像出典:日経WOMAN
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おはようございます。モウリです

本日は、スノーピーク現会長が書かれた著書「スノーピーク「楽しいまま!」成長を続ける経営」の中から一部抜粋してお届けしようと思います。

本書は「好きな事で仕事にする」方法を教えてくれる本です。
実はこちら2部作になっておりまして。
1部では「スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営」という書籍。

これに続くシリーズとなっている。
是非気になる方は1部も読んで欲しい。

  • 好きなことだけ?
  • 楽しいまま?

そんなことが本当にできるのか?と疑問に思う人もいるかもしれないが。
本書にはそのためにしてきたこと、考えてきた事を書いている。
そしてそれは、スノーピークの製品やサービスとして実現して行くだろう。

本日は本書の中でも第4章『「好きなことだけ!」を仕事にする極意』をお届けしたいと思います。

スノーピークとは?

1958年に金物問屋を創業した山井幸雄は登山を趣味として、地元の新潟を始め群馬の山々でのロッククライミングを楽しんでいました。当時の登山用品に不満を持った山井幸雄がオリジナル商品として登山用品を開発し、翌年の1959年に全国に販売開始したのがスノーピークのはじまりです。その後キャンプブームや下火の時代にも、変わらぬ姿勢で品質重視の路線を守り抜き、現在では日本だけでなく、世界中から注目されるアウトドアのトップブランドとして、絶大な人気を誇っています。

好きな事をする事でしかイノベーションは起きない


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

今の時代にクリエイティブな事をビジネス化する場合、好きな事にフォーカスした方が誰よりも事業化していない処女地を見つけやすい。

自分の内なる欲望、要求があるからこそ消費者として「こう言う製品が欲しいけれどまだ誰も提供していない」と気づくし、好きであるがゆえにまだ誰も具現化していないカテゴリーを掘り当てられる。
実際、スノーピークが他者に先駆けたキャンプスタイルを提供できたのは、著者自身がそんなキャンプを好きで、そんなキャンプがしたいと思っていたからだ。

著者にとって好きな事をするのは、今まで誰もしていない事を実現する原動力になっているし、スノーピークの製品が他のキャンプ用品のブランドより機能していたり美しいかったりするのは、スノーピークがそれだけキャンプ好きだからに他ならない。
そして、好きな事だけを仕事にしていても、スノーピークは東証1部上場にまでたどり着けたのだ。

もっと言えば著者は、好きな事をする事でしかイノベーションが起こせないと思っている。
イノベーションはともすれば、「血と汗と涙の結晶」と言った言い方をされる事があるし、勿論分野によってはそれは事実であると思う。
それでも「やはり、これはなんだか面白そうだ」と言うところから始まる。
そこで大切なのはやはり「好き」と言う気持ちや「楽しい」と言う感覚だ。

当然だが、今ないものを形にできるかどうかはやって見なければわからない。
だからこそ、なおさらその人にとって面白そうとか楽しそうと言うところがないと、新しいことは起こらない。
こうした点において、スノーピークはわかりやすいケーススタディの一例かもしれない。

好きならば、まずやってみたほうがいい


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

アウトドアギアのユーザーは、「こう言う製品があればいい」と言うイメージは持っていても、それを形にしたり、ビジュアライズするところまでは言っていないかもしれない。
それまでにない製品なのだから当然とも言える。

これに対して、スノーピークがクリエイティブを発揮してそれまでになかった製品を形として提示すれば、ユーザーは「それだ、それだ」となるし、そこにはマーケットが生まれ、売上高が上がる。

著者の感覚では、これは「結果的に売上高がついてくる」と言うほうがあっているかもしれない。
正しい事をしていれば、それが事業として成立する。
つまり、好きなことにこだわって新しい製品を作ることによって、事業に見合った売上高を生み出すのが可能な時代と著者は言います。

今、ご自身の仕事のあり方や考え方を見つめ直したりする時期にある人に伝えたいのは、やってしまえばいいと言うことだ。
やりたいこと、好きなことがあるならば、やってしまえばいい。
手探りの状態でも好きな人が集まって「こう言うことができたらいい」となっているならば、とりあえずどんどんやってみるべきだ。

例えば長野・白馬で地元の八方尾根開発と組んだ日本で一番クオリティの高いグランピング施設「スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原」にしても、計画が動き始めてから実現するまでに3年ほどかかっている。
国内有数の高級施設だが、完成まではトライアンドエラーの連続だったと言います。

結果だけからみると、これまでにないかっこいいグランピングになっていて「スノーピークの取り組みはやはりかっこいい」ととらえてもらえたとしても、イメージを形にするには様々な試行錯誤がある。

 

▽スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原▽

画像出典:https://www.fashionsnap.com/

長野県白馬・北尾根高原ツアーを見てみる

どれだけかっこいいものができてもそれが売れないならばビシネスとして成功しない以上、様々な角度から考えなければならない。
もっとかっこいいグランピングができるのではないか、価格帯は最初に想定して以上にすべきなのか否なのかなども判断しなければならない。

それまでにないものを作るのは大変だと思うかもしれない。
しかし、自分たちが好きなことに立ち返り、またそれまでの企業文化に照らして考えたら、進むべき方向は自然と見えてくる。
スノーピークの場合、この時根本にあるのは「面白い、それはやろう」と言う共通認識だ。

好きだと言う思いを大切にした上で、あえて付け加えるならば「好きであると同時に、できるだけ得意な事をしたほうがいい」と言う事だろうか。
これは料理に例えると、わかりやすいかもしれない。

つまり、料理を作る事が大好きな人は、作った料理を他の人に食べてもらったときに「これは感動的に美味しい」と言われたら、仕事にしたほうがいい、と言う事だ。
好きであり、なおかつ得意な事にはそれだけでチャンスがあると思う。

クリエイティブにはリアリスト視点が欠かせない

今でにない製品をいかに具現化するかこそがメーカーの本質だと著者は思っている。
その意味でスノーピークはメーカー的な会社だと思う。
社員も他者の真似をしないメンバーが揃っていて、これはスノーピークの特性かもしれない。

しかも、それまでになかったマーケットの場合には、比較的自由にプライシングできる。
このためスノーピークでは新しい製品を作ってから、「ではこの製品にいくらのバリューがあるだろうか」といった形でブライシングしている。
コストから上代を設定するよりも「こんな製品ができたら素晴らしいが、ではいったいくらで売れるだろうか」と考えるのが、スノーピークのプライシングだ。
これは価格を高くしたいと言うのではなく、差異点やスノーピークらしさにこだわっているからである。
そして、革新的な製品の方が顧客にとってもニーズが高い。

どんな製品に取り組んでもいい理由


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

では、なぜブルーオーシャンの市場を切り開けるのかといえば、デザインマインドカンパニーであるからだ。

デザインとはそれまでにない製品を作る事であり、それこそがスノーピークのなりわいであり、存在理由だ。
ただし、デザインで抜け出すには製品が1ってんだけあればいいのではない。
色々な製品群によって世界観を作っていく取り組みが欠かせない。
スノーピークの場合、会社の基本的なあり方を定めたミッションステートメントには「常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていく」と記している。
これは相当に高い目標であり、1つの製品では実現できないし、カテゴリー自体を刷新しなければならない。

例えば、80年代後半から90年代の中盤にスノーピークが取り組んだのは、それまでのどこかのチープさが漂うキャンプを、自然のんかで豊かで贅沢な時間を過ごすためのキャンプに変える事であり、確かな革新性があった。
このテーマを実現するため、スノーピークは製品だけでなく全体的なしつらえも含めて取り組んだ。
キャンプで過ごす時間を豊かで贅沢に刷新しようとしたからこそ、全てが新しいものになった。

つまり、スノーピークは製品だけを作る会社ではない。
実現しようとするコンセプトや世界観が先にあり、それを実現するために製品やサービスを作っている

椅子専門メーカーは椅子だけを作っているし、テーブルだけを作っている会社、鍋だけを作っている会社も世の中には存在する。
しかし、どんなに良い製品を作った¥ていても、単品ではなかなか豊かな気持ちにはならない。
これに対して、スノーピークにはデザインされたドームテント、タープ、ファニチャー、キッチンなどによるレイアウトシステムがあり、これらを組み合わせて使うことでスノーピークの世界観を表現する事ができる。
製品1点ずつにこだわるが、それだけでなく組み合わせる製品同士の高さを揃えるなどしてシステム化するから豊かなキャンプスタイルになる。

アウトドアを楽しむ人は、製品の根底にある思想なども深く考える方が多いのだと思う。
自分たちが自然の中で使うための道具をある程度理解していないと喜びを見出しにくいのかもしれない。
だからこそ、アウトドア好きのユーザー同士は製品やサービスを通じてコミュニティーができやすい。

これは他の分野だとなかなか成立しない事であり、アウトドアの特徴と言えるかもしれない。

「何をやらないか」もしっかり決める

▽筆者の山井太会長▽


画像出典:https://mastersdream-magazine.jp/

「面白いことをやりたいがなかなかコストに合わない」と言う声は本当によく聞く。
スノーピークでなぜそれができるか。
著者はスノーピークはピュアでロマンチックでセンチメンタルな会社だと思っているが、それだけではともすれば失敗するから、一方で化学的合理性をすごく重視している。
それはつまり、「成功するためにどうしたら良いか」と言う視点だ。
例えば「金型の投資に数百万払う」となったら、「では展示会で受注数が何個取れればペイできるのか?」と言うようにしっかり考えている。
そう言う発想が大切だと思う。

著者は慎重ではあっても、何もかもが心配出来ないと言うことではなく、取り組んだ結果、ダメだったらやめれば良いと思っているし、チェックポイントを意識しているからブレないし軌道修正もできる。
新たな取り組みにはリスクがあるのが事業だし、新しいマーケットを作ろうと思ってアプローチするのだから通常よりも難しい。
だからこそ、より成功の確率を上げられるように考えなければならない。
また何か杯めたい事が会社の致命傷になってはいけいので、リスクがある事ならば「どうやったらやめるか」の撤退ルールをあらかじめ決めた上で一生懸命に取り組む。
ロマンチックな所とリアリストな所が両立している会社であり、両輪が回っている。

一方でよくあるのは、クリエイティブな取り組みに対して、「この事業は初期投資がかかり、数年は赤字になるからやめておこう」と言う考え方だ。
しかし、1年目、2年目が赤字になっても3年目sw黒字になれば、取り組むべきだと思う。
中身は精査しなければならないが、事業の先を見ながら推進するべきだ。
要はできる全てのことをしてプラスにすれば良いのである。
スノーピークの場合、オートキャンプのブームがさって売上高が落ち込んだとき、自分たちにできることはなんだろうと考えた。
その結果、新製品の開発に舵を切った。
定番の焚き火台はその時期にできたし、スノーピークを支える製品の多くはこの時期からスタートしている。

多くの人がかっこいい会社を作りたいし、かっこいい製品を作りたいと言う意識を持っている。
しかし、大半は苦しくなると、かっこいいのとは違うことをする。
これではブランド力をつけることは残念ながらできない。
その意味では、経営者は「やらないこと」をしっかり規定すべきだと言えるだろう。

時代が変われば戦い方は変わるかもしれないが、本質的にスノーピークがやらないことは変わらない。
売上高が欲しいからといって、やらないことを変えて売上を増やすことはしない。
「何を発売してもかっこいい」となるには、やはりこうして時代を切り開いている感覚がなければならない。

ペイしなかった金型はない


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

製造業で新製品に取り組むには新たに金型を起こす必要がある。
数千万円から数億円のお金がかかることもあり、先行投資が必要になるが、先代から60年もこうしたやり方を続けているから、先行投資を恐れることはあまりない。

むしろこの段階から意識すべきなのは金型への投資をペイするために営業もきちんと行うことだ。
スノーピークにはこの流れが普通にあるから、金型を起こしてペイしなかったケースはこれまでに1回もない。
つまり、クリエイティブはしっかりした営業と表裏一体であり、クリエイティブで楽しいと言えるような仕事は、きちんと事業として数字を挙げられるから継続できり。
それがないと、どれだけ楽しくても実際に取り組むのは難しい。

楽しむためには、きちんと売上高を上げて利益もあげる必要がるし、これがなければ「遊ばせてもらえない」。
クリエイティブであり続けるためにはリアリストとして売上高と利益が必要だ。
ロマンチックでいたいがために、クリエイティブでいたいがためにリアリストでもある。
そこには一定の厳しさや規律が必要になるだろう。

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ビジネスを伸ばすには「他責化」ではなく「自責化」


画像出典:https://froggy.smbcnikko.co.jp/

ここからはスノーピークのリアリストな面についてもお伝えしようと思う。
好きなことだけを楽しいまま続けるには欠かせない取り組みだ。

キャンプの力を知っているからチラシをまく

電話やチラシというと泥臭い営業と見られがちだが、スノーピークでは化学的、合理的に進めている。
例えば、チラシを1万5000枚まくと店頭にこれだけの人数が来るはずだといった過去のデータも生かしながら行っている。

「コアなユーザーがいるからそこまでしなくてもいいのでは?」と言う人もいるかもしれないが、著者はそう思っていない。
日本のキャンプ人口は少し前まで6%ほどで2018年に7%になったと見られているが、スノーピークは少なくとも比率を人口の20%ぐらいにしたいと思っている

それはなぜかと言うと、キャンプが持っている力を知っているからだ。
著者はキャンプを楽しむ人の方がそうでない人に比べると幸せだと思っている。
だからキャンプの「向こう側」にいる1人ひとりをキャンプに誘いキャンパーにってもらうには、スノーピークのミッションの1つだ。
キャンパーが人口の20%になったらいまよりも相当いい会社になると本気で思っている。

実際、1990年代のオートキャンプのブームの時にキャンパーの比率は14〜15%ほどまで増えている。
だから、20%は実現が不可能な数字ではない。
こう考えると、スノーピークにはヘビーユーザーだけが来ればいい訳ではないことがわかってもらえるはずだ。
全体を底上げし、ユーザーを増やしていく活動はそれだ大切で、そのためにチラシ配布を行い続ける必要がある。

対面販売にこだわる理由


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

キャンプ関連の売り場はほとんどがセルフでの販売となっているが、スノーピークの場合、キャンプ人口を20%にするには対面で丁寧に説明する売り場が必要だと考えて取り組んでいる。
直営店のほか、スポーツ用品の量販店などにスノーピークが30坪ほど売り場を設けているインストアという形式などがあるが、いずれもスノーピークの社員が丁寧に説明して販売している。

スポーツやアウトドア用品の小売店の平均的な1坪当たりの年間売上高は95万〜115万円、ざっと100万円ほどと言われているが、スノーピークの場合、インストアで平均値が約250万円となっている。
およそ2.5倍であり、効率のいいビジネスを行っているといえるだろう。
対面販売はこのところ、百貨店などでは苦戦が伝えられているが、スノーピークで対面販売に携わるはキャンプが好きな人であり、販売担当の社員には自分たちが好きなキャンプの良さを伝えたいという気持ちがある。
また販売担当の社員も、もともと初心者からスタートして経験を積み重ねながらベテランになっているため、その過程で何が起こるかよくわかっている。
こうしたユーザーエクスペリエンスはこれからキャンプを始める人やキャンプをより楽しみたい人にとっては有益だと思うし、それが数字に結びついている。
ネットでの販売も行っているが、ネットだけで買う人は5%ほどにとどまる。

スノーピークのビジネスを分解すると、革新的なプロダクトにフォーカスされがちだがこれはあくまでもビジネスの半分にすぎない。
残りの半分は店頭でキャンパーが必要な情報を収集しながら、キャンパーに必要な製品をセレクトしてもらうこと、言い換えればスノーピークの接客によってユーザーに楽しいキャンプライフを送ってもらうことだ。
製造にも販売にも情熱を込め、キャンパー・ツーキャンパーで一気通貫できている組織がスノーピークだ

最上位の会員カード「サファイヤ」ができた


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

スノーピークは顧客の購入金額に応じてカードが切り替わる仕組みを取り入れているが、ここ数年の間位にそれまで最高ランクだったブラックカードを超えるサファイヤカードができた。
ブラックカードは累積の購入金額が100万円を超えた場合に付与しているが、達成した顧客から「次なる目標がないから、その上のランクを作って欲しいと」いう声がきっかけになった。
こうして累積の購入金額が300万円を超えた人を対象にしたサファイアカードを導入した。

スノーピークにとって、カードランクはロイヤルカスタマーがどれくらいいるかを示すものであり、KPI(重要業績評価指標) の1つとなっている。
顧客にはカードランクに応じてイベントへのインビテーションや優先権があり、ポイントの付与率アップなどのベネフィットがある。
またランクが上がるほどスノーピークにとって重要な顧客であることを示すため、そのコミュニティーの主要なメンバーとして、ステータスを感じることができる。
カードは顧客を「囲い込むための戦略」と言われている。
スノーピークにその意識がまったくないわけではないが、むしろカードを通してユーザーをより幸せにしたい、と思っている。

よくいわれるのは、「スノーピークの製品は永久保証までついているし、テントは1張しか買わないのではないか」ということだが、実際にはそうではない。
キャンパーとして熟練してベテランキャンパーになっていくと、TPOに応じていろいろなテントの使い分けができるようになってくる。
すると複数のテントを購買する人が多く、顧客のなかには20張ほど持つ人も少なからずいる。
素材自体の経年劣化は永久保証の対象ではないため、例えばリビングシェルという製品はファーストロットが2000年前後だが、何度も買い換えていただき「この製品は4張めだ」という人もいる。
スノーピークには「テントは1張」という業界の「常識」が当てはまらない。
そしてこうした結果、サファイアカードのようなへビーユーザーが誕生している。

スノーピーク製品は他社に比べて安いわけではないが、だからといって富裕層であるかどうかの軸ではなく、キャンプの回数が多いかどうかの軸のほうが考えやすい、と思っている。
初心者から入って年間のキャンプ回数が増えていくヘビーなキャンパー向けビジネスかもしれない。
一方、スノーピークにたどり着く前にキャンプをやめてしまう人がいるため、ファーストチョイスにもしてもらうため、初心者向けの製品も用意している。

「天気が悪いから売れない」ではダメだ」

著者は社員が原理原則を見失った場合、結構厳しく言うこともある。
相当なことがない限り社員をしかることはないが、本当のやさしさとはやはりその人が持つポテンシャルに応じた仕事を実現させることだと思う。
それによってやりがいが増大し、自己実現し、幸せにつながるはずだ。
こうした視点から私は同じベクトルで働いている社員を褒めるが、問題はそうではない場合だ。

よくあるのが何かうまくいかないことがある場合、原因を外に求めるケースだ。
外部を変える努力はもちろん大切だが、なかなか動かないこともある以上、まずはあくまでうまくいかない原因が自分たちにあると考えて取り組むべきだ。
スノーピークでは「自責化」という言葉をよく使うが、これは文字通り自分の責任にすることを指す。
その反対が「他責化」であり、社員が他責化しないように絶えず気を配っている。

例えば景気が悪いとか市場が縮小しているという場合でも、業績を伸ばしている会社はどこかにある。
だからうまくいかないときに景気や市場縮小を理由にしてはならないし、「それを言ってはおしまいだ」と思っている。

そもそもスノーピークは既存のマーケットがどうあれ、新しいマーケットをつくっていこうという会社だ。
新しいマーケットはどんなときでも存在している以上、景気の動向などはそもそも無関係なはずだ。
環境などがどうあれ、自分たちがきちんと取り組めば道は開ける。
他責化をやめて自責化し、自分が変われば、ものごとを好転させることができる。
仕事ではあくまでも自責化にフォーカスするしかない、と筆者は思っている。

スノーピークでは社員は日報を書くことになっているが、例えばショッピングモールに入居する店舗の店長が「今日は平日で天気が悪かったのでモールの顧客自体が少なく、売上高が伸びなかった」と書いていたとする。
天候に左右されることのあるアウトドアの製品であればいかにもありそうだ。

確かにそれは事実かもしれないが、これでは売れなかった理由を他責化しているにすぎない。
それではなにごとも進まなくなるだけだ。
むしろこうした日ならば「今日はモールに人が少ないだろうと予想したので10人の顧客に電話し、5人に来店してもらい、売上高を伸ばした」とする必要がある。
これこそが自責化であり、この点を確認するために社員の日報を見ている。

ビジネスの変調を知るためには、多忙であっても、ミーティングはやはり定期的に開いたほうがいいと思う。
ミーティングを開かないまま誤解して事業が間違った方向に動くよりは、ミーティング によって方向感を確認したほうがいい。
といっても筆者の場合、1回のミーティングは30分ほどと短い。
冒頭の10分ほどで自分のなかで答えは出ているが、さらに聞く作業に20分弱をかけて、最後にポイントを指摘するスタイルだ。
要はペクトルが合えばいいから、1時間以上の会議はほとんどない。

2つの採用方法にシフト


画像出典:https://dime.jp/

スノービークはここ10年間で大きく成長しており、社員数はどんどん増えている。
新卒採用にあたってはかつては人材会社を活用したこともあったが、必ずしも希望に合致した社員が集まらなかった。
「アウトドアが大好きです」と言って入社しても早期に退社してしまうこともあったし、ある年は入社した社員の3割ほどが退社したこともあった。

そこで2年前からは人材会社の活用をやめ、入社を希望する人はまず自分でスノーピークのウェプサイトにアクセスして直接、エントリーする形に切り替えた。
わざわざ探さないと応募できないのだが、その効果は思いのほか大きく、本当にスノーピークで働きたい人が集まるようになった。
注目すべきは新入社員の15%ほどが子どものころ、スノービークのキャンプ用品でキャンプをしてきた人であること。
私が幼いときから知っている人もいるし、スノーピークでキャンプをしながら育ってきた「スノーピークキッズ」は、プランドバリューをよく知っているという強みがある。

採用のもう1つが社員による紹介だ。キャンパーが集まっている会社なので社員のキャンプ仲間でほかの会社で実績を上げている人がいたら誘って入ってもらう。
この方法だとキャンプを楽しんでいる人を集められるというメリットがある。

待遇についても記すと、アウトドアの業界は平均給与がほかの業界に比べて必ずしも高くない。
ユーザーを幸せにする源泉は社員の幸せである以上、この点を改めて担保する必要がある。
そこで19年は思い切って人件費を前年に比べて30%積み増している。

社内にはいろいろな社員がいる。
一生懸命に仕事をしている開発の社員がつくったプロトタイプを前に「神だね、天才だ」と言いたいほどの瞬間もある一方、ジョブローテーショ ンで2回ほど異動して自分に合った職場にたどり着いた人もいる。
この社員がスノーピー クを好きなことは明白なので、ここで働いて自己実現してほしいと思い、いろいろやって もらううちに、今の職場に配属となった。

冬と夏にほぼ全員が集合


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

ヘッドクォーターズが3ヵ所あるうえ、店舗を全国展開しているので全社員が集まる機会をつくるのはなかなか難しいが、毎年2回の社員総会では大半の社員がそろう。
冬の社員総会は燕三条のHQの近くの旅館に泊まることになっている。
2月に開催するので1月からの新年度の経営計画を浸透させる意図がある。
1年頑張った社員に対して労をねぎらう忘年会的なコミュニケーションもあるが、どちらかといえば比較的フォーマルでトップダウン型の発表やベクトル合わせが中心になる。

これに対して夏の社員総会はボトムアップの要素が強い
2018年から始めたばかりだが、8年は燕三条のHQでキャンプをしながらアイデアセッションを行った。
10人ほどずつが約25チームに分かれてアイデアを出し合った。
テーマはスノーピークの新規事業などで、未来志向で考えてもらった。

グループはさまざまな拠点から集めた社員で構成するため、それまでになかった社内ネ ットワークができる。
夜の「焚火トーク」ではみんなで焚火を囲み、リラックスした気分で語り合う。
実現する可能性があるアイデアは冬の総会で表彰し、実際に事業として取り組む。
初年度は私も参加し、テントに泊まった。
台湾や米国からもスタッフが参加。
国内も含めて交通費を負担するためコストはかかるが、それだけの効果はあると思う。

全社員というわけにはいかないが、スノーピークにはキャンプイベントが多数あり、イベント前日に社員が集まるスタッフナイトを開くことも多い。
みんなで焚火を囲みながら 未来を語るのはスノービークのスタッフにとって恒例となっている。

まとめ


画像出典:https://www.snowpeak.co.jp/

本日は以下について解説しました

  • 好きな事をする事でしかイノベーションは起きない→大切なのはやはり「好き」と言う気持ちや「楽しい」と言う感覚
  • 好きならば、まずやってみたほうがいい→「好きであると同時に、できるだけ得意な事をしたほうがいい」
  • クリエイティブにはリアリスト視点が欠かせない→それまでになかったマーケットの場合には、比較的自由にプライシングできる
  • どんな製品に取り組んでもいい理由→実現しようとするコンセプトや世界観が先にあり、それを実現するために製品やサービスを作っている
  • 「何をやらないか」もしっかり決める→経営者は「やらないこと」をしっかり規定すべきだ
  • ペイしなかった金型はない→クリエイティブはしっかりした営業と表裏一体
  • キャンプの力を知っているからチラシをまく→過去のデータも生かしながら行っている。日本の人口の20%ぐらいにしたいと思っている
  • 対面販売にこだわる理由→製造にも販売にも情熱を込め、キャンパー・ツーキャンパーで一気通貫できている組織
  • 最上位の会員カード「サファイヤ」ができた→カードランクはロイヤルカスタマーがどれくらいいるかを示すものであり、KPI(重要業績評価指標) の1つ
  • 「天気が悪いから売れない」ではダメだ」→仕事ではあくまでも自責化にフォーカスするしかない
  • 2つの採用方法にシフト→ウェプサイトにアクセスして直接エントリーする形。社員による紹介
  • 冬と夏にほぼ全員が集合→トップダウン型の発表やベクトル合わせボトムアップの要素で未来志向

なかなかボリューミーですから。
お時間ある際に何度も見直してみてください。

本書では他にも「ガバナンス強化が成長スピードの繋がる」「未来作る場所、オペレーションを構築する場所」「エンパワーメントを知ったから今の会社にできた」話などなど盛りだくさんです。
気になる方は是非本書を手に取ってみてね。

本日も最後までお読み頂き誠にありがとうございます。

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