こんにちは。 皆さんは、STITCH FIX(スティッチ・フィックス)と言う企業をご存知でしょうか?
って方も結構いるんじゃないですかね? 一応、D2C企業と言われているみたいなんですが。 僕的には、データサイエンティスト企業なイメージが強いです。
簡単に言えば、ユーザーは月額20ドルを支払うことで、スティッチフィックスから毎月5種類の洋服などのアイテムが届く。欲しいものだけキープして、要らないものは数日以内に無料で返送。買い取りたいものの代金だけを支払えばいい。購入すれば、代金から月額料金の20ドルが差し引かれる。
2020年第三四半期には約24万人の新規ユーザーの獲得に成功、会員数は約380万人までに増加しました。EC事業が好調な背景から、2021年1月26日時点における同社の株価は、2018年上場当時よりも500%増、過去最高を記録しました。
今日は、そんなSTITCH FIX(スティッチ・フィックス)について解説していきます。
小売の生き残りのヒントが隠されているかもしれませんよ!!
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創業者のKatrina Lake(カトリーナ・レイク)について
レイクは、日本語教師の母親と、公立大学の医師である父親のもとで、サンフランシスコで育った。スタンフォード大学に入学し、父親と同じく医学の道を歩もうと考えていたが、興味を失って経済とビジネスを学んだ。卒業後はコンサルタント会社に就職し、実店舗を展開する小売店を担当。クライアントのひとつ、百貨店チェーン「コールズ」のような企業が、顧客を理解するためのデータが不足しているか、データを活用できていないことに、レイクは気がついた。
レイクは、経営学修士(MBA)を取得するためにハーバード大学に進学した。それはちょうど、ファッションアドバイス・サービス「トランク・クラブ」が、男性消費者とパーソナルスタイリストのマッチングを開始した時期でもあった。トランク・クラブは、男性たちは買い物が嫌いでもオシャレをしたいと考えているに違いないと見ていた。
レイクは、その女性版を自分で立ち上げようと決意した。そして、元クラスメイトのエリン・モリソン・フリン(Erin Morrison Flynn)とともに、レイク個人のクレジットカードを限度額まで使ってファッションアイテムを購入すると、ボストンに住む知人友人と契約を結んで各自の好みのファッションに関するデータを収集。それをベースに、洋服を提供するサービスを開始した。
このサービスが注目を集め始めた結果、一流ベンチャー投資家であるベンチマーク・キャピタルのビル・ガーリーと、ベースライン・ベンチャーのスティーブ・アンダーソンから資金を調達。レイクは、34歳になった2017年に、年間売上がおよそ10億ドルの同社を上場させ、史上最年少でIPOを達成した女性創業者となった。
現在創設者兼CEOのカトリーナ・レイクが辞任。
レイクは8月1日付けで取締役会会長に移行し、現社長のエリザベス・スポールディングがCEOに就任しています。
一代で富を築いた女性ビリオネアの仲間入り
カトリーナ・レイクがマサチューセッツ州ケンブリッジにあるアパートの一室で、働く女性がラクに買い物できる手段を提供したいと思い立ち、個人向けファッションサービス「スティッチフィックス」を創業してから10年。最高経営責任者(CEO)を務める彼女の資産は、ついに11億ドルに膨れ上がった。
新型コロナウイルスのパンデミック中、消費者が便利さと安全性を求めてオンラインショップに押し寄せたため、スティッチフィックスの株価は急騰した。38歳になったレイクは、2020年10月にフォーブスが発表した「一代で富を築いた米国の女性富豪ランキング」で64位にランクイン。そのときの純資産額は3億6000万ドルだった。
しかし、ここ3カ月で同社の株価は3倍近くに跳ね上がり、レイクの持ち株(全体の10%超)の価値はついに10億ドルの大台に乗った。フォーブスの推定では、保有現金やその他の投資を合わせると、レイクの資産額は11億ドルになる。つまり、米国に19人しか存在しない、一代で富を築いた女性ビリオネアの仲間入りを果たしたのだ。
ほかの女性ビリオネアには、人気司会者オプラ・ウィンフリーや、アパレル大手ギャップ共同創業者ドリス・フィッシャー、フェイスブック最高執行責任者(COO)シェリル・サンドバーグなどがいる。
Stitch Fix(スティッチ・フィックス)について
ここからは、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)について紹介していきます。
コンセプトはシンプル
客は最初にかなり細かいアンケートに答えなければならない。
これを基に、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)は、客のサイズや好みのスタイルを特定する。
Stitch Fix(スティッチ・フィックス)では、データサイエンス、機械学習、人間のスタイリスト3900人を総動員して、個々の客におすすめの衣料を詰め合わせたボックスを送る。
このボックスを、同社では「フィックス」と呼んでいる。
客は、気に入ったアイテムを受け取り、気に入らないアイテムは返却できる。同社ではこの受け取りと返却の実績データを基に、次に発送するアイテムの予測精度を向上させる。
「フィックス」ボックスのオーダーを重ねるたびに、自分好みのスタイルにますます近づいてくる。
ユーザーは月額20ドルを支払うことで、スティッチフィックスから毎月5種類の洋服などのアイテムが届く。欲しいものだけキープして、要らないものは数日以内に無料で返送。買い取りたいものの代金だけを支払えばいい。購入すれば、代金から月額料金の20ドルが差し引かれる。
アパレルではなくデータ会社
現在、同社は、300万人を超える常連客を抱え、取扱ブランドは700を超える。
だが、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)の根底にあるのは、少なくとも従来の意味で小売業者ではない。
データ会社なんです。
Stitch Fix(スティッチ・フィックス)では、各アイテムの説明や製品持性・サイズから、顧客ごとのおすすめ内容に至るまで、データがすべて。
同社内部のOTB(在庫量に応じた仕入れ量の調整)プロセスや際仕入れのタイミングでさえ、アルゴリズムで指示が飛ぶため、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)では、業界平均をはるかに上回る在庫回転率を一貫して達成できている。
「社風にデータサイエンスが織り込まれているのではなく、データサイエンスこそが社風なんです。当社事業はそこから始まったのであって、普通の組織構造に後づけで加えたわけではありません。そして顧客と顧客ニーズを中心に据えて、当社のアルゴリズムを開発しました。(レイク氏)」
すべてがアルゴリズムに基づいていて、毎日、このアルゴリズムに新たなデータが供給されればされるほど、時間とともに精度も上がっていくと言うわけだ。
同社のアプリには、「スタイルシャッフル」と言うミニアンケート機能がる。毎日、衣料品数点の画像が表示され、これに簡単に良し悪しの評価ができるもの。
このようにして顧客の声を常に梳き上げる仕組みを整える事で、顧客の嗜好を予測する膨大な知見が蓄積されていく。
服のレコメンデーション以外も、物流システムの最適化、次にはやる洋服の予測と仕入れ、カスタマーサービスなど、ビジネスのあらゆる場面でデータを活用している。似たようなプロファイルの人に対して、ある人が気に入ったものを送ったりもしてます。
Stitch Fix(スティッチ・フィックス)が好調な理由とは?
データサイエンティスト1人を採用するかどうかさえ、依然として多くの小売業者は考えをあぐねいている中、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)は、80人のデータサイエンティストを確保していて、その多くは神経科学や数学、統計学、天体物理学などの分野の博士号を取得している。
そもそも会社の構造上、事業の中核はデータ利用が大前提になっているStitch Fix(スティッチ・フィックス)では、必要な存在と言えます。
顧客は能動的に買い物をしない
米アマゾン・ドット・コムなどの通常のECとは顧客行動が根本的に異なる。スティッチフィックスが似合うものを選んで送ってくれるので、顧客自分から能動的に買い物をしない。「着てみようかな」とオープンな心持ちで新しい商品を選べることを意味する。
顧客が好んでいる商品の全体像を、よりバイアスの少ないデータという形で保有することができるということだ。顧客の身体サイズデータと商品のサイズデータも詳細に、例えば襟から第1ボタンまでの距離は何センチか、というレベルですべて計測して集積している。
顧客第一主義を実現するために必要なデータセットが、他のファッションECサイトと比べて圧倒的に集まりやすいビジネスモデルだと言える。ライフステージの変化も分析によって把握し、追随していく。
アップルも経営直下にAI責任者
こうした組織構成は会社のAI戦略を反映しており、スタートアップ以外にシリコンバレーのテックジャイアントも採用し始めている。
例えば2018年12月に米アップルもティム・クックCEO直下にAI統括責任者として、ジョン・ギアナンドレア氏を任命した。ギアナンドレア氏は米グーグルの検索チームトップだったが、8カ月前にアップルに移籍したばかりだった。外部から来て短期間に経営陣に指名されたので、話題となった。デベロッパー向けの機械学習機能「CoreML」の開発や、AIアシスタントの「Siri」などアップル商品のすべてのAI機能を管轄するという。
事業部にも当たり前にデータ活用や解析チームを置きながらも、CEO直下にAI統括チームやデータサイエンス統括チームを持ち始めたことになる。筆者が考えるに、プロダクトの垣根を越えたデータ統合戦略を実行していくのではないか。
プロダクトチームの中でデータ活用をしているうちは、大局的なデータ統合を行える人材は育たない。データ統合は非常にコストと労力がかかるため、1つのプロダクトチームの予算では正当化しにくいタスクを行う必要が出てくる。それをトップダウンで行うのが、CEO直下のAI統括チームの役目だと考える。
米フェイスブックも同様だ。エグゼクティブの組織は、マーク・ザッカーバーグCEOの直下にCTOがいて、CTOの下にAI総括者やブロックチェーン総括者など5名が並んでいる。前述の通り、通常プロダクトチームの傘下にデータ解析チーム、データサイエンスチームが入ることが多い中で、フェイスブックのこの組織図は明確にプロダクトチームと独立した形でAIチームを置いている。
パーソナライズかレンタルか、アパレルの2つのトレンド
もう1つトレンドとしては、やはりレンタルの動き。
中でも、爆発的に成長している洋服レンタルサービス「Rent The Runway」は注目に値するサブスクリプション・モデルの企業。
アパレルブランドと着実に提携を増やし、クローゼットがパンパンになった所有の時代から、必要な時に必要なものを一時的に共有する時代の筆頭的企業。
たとえばハイブランド含むRent The Runway上の500以上のブランドのほぼ全てのアイテムを月額139ドルで同時に3着無期限に借りることができ、もちろん1度きたらすぐ次の服にチェンジし放題(ただし返却から宅配までのサイクル上、1週間強のクールダウンはある)の定額サブスク「Rent The Runway Unlimited」や、安価な月89ドルの制限版「RTR Update」も始めている。
他にもレンタルではLe Toteの取り組みも興味深い、レンタルしてみて気に入ったら最大50%OFFで購入できるというもの。(これは家電量販店大手ベストバイが家電レンタルで同様の取り組みをしていた。レンタルの定石かもしれない。)
その他、Adidasやアンダーアーマーなどアパレル企業が直接サブスクリプションを手がけはじめており、所有の時代からの部分的なシフトが加速している点は要チェックかもしれない。
まとめ
2016年にメンズ向けをはじめていたが、マタニティやサイズの大きめのプラスサイズ版も好評で、キッズ版「Stitch Fix Kids」も展開している。
データ共有を前提に顧客との開かれた関係を築くから、顧客ニーズを正確に予知できる。顧客からの情報が多いほど、オススメの精度も高くなる。すると、さらに顧客から情報が上がってくるようになる。その結果、顧客にとっては価値が高まり、ブランドにとっては売上と顧客の忠誠度が高まると言う好循環が生まれるわけだ。
参考文献:AMP/WWD/アメリカ部/Apparelweb/Forbes/motleyfool/小売の未来(ダグ・スティーブンス著)
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